左官は健康産業


 設計図書から一方的に塗り壁が無くされたのは昭和50年前後3年間のことである。 

 塗り壁が設計図書から無くされて、左官は何をやる仕事なんだろうと考えてみた。左官は壁を塗る仕事である。

 塗り壁の原点は土壁である。土壁の家は気持ちがよい、癒されるきがすると多くの人が答えてくれる。

兼好法師の徒然草第五十五段に「家の作りようは夏をむねとすべし、冬はいかなる所にも住まる・・・」とある。

平安時代に誕生した、竹と縄を芯とした土壁と漆喰の家は日本の夏特有の高温多湿の気候、特に高い湿気の害から住む人の命、健康、財産を守ってきたのではないかと思った次第である。

土壁、漆喰の塗り壁に代わり、現代建築に採用されたのがビニールクロスの壁紙であった。

ビニールクロスは湿気を全く吸収せず、呼吸もしない化学物質の製品であり、現在の居住環境は湿度が高くかびやすく、又、建材、その他から出る化学物質のガスで汚染されてきたのである。

化学物質のガスも恐ろしいのだが、湿気の恐ろしさに気付いている現代人は少ない。家がかびるということは、身体もかびるのである。

 その結果がシックハウス(湿気ハウス)問題である。

シックハウス問題は伝統的な日本の家には無かった問題である。

時代のキーワードは環境・健康・教育である。

シックハウスから住まう人を救い出せるのは左官の漆喰、土壁であると思う。

しかし、竹小舞の土壁は日本の文化であり、素晴らしい壁であるのだが、いかんせん、経済性とスピード性、施工性に欠けるきらいがあり、現代建築に採用は難しい面があると思う。


日本人の命と健康と財産を守れる時代に適合した「本物の新しい土壁」「エコ・クイーン」の普及に取り組んでいくことが日本の子供の未来を守り、左官の明日を豊かにしてくれるものと信じている。