ションベン

ションベン
オンワードホールディングス名誉顧問 馬場彰氏が
日経の私の履歴書26回で繊維業界の復興について述べている
ションベンとはアパレルメーカーと生地メーカーの間で伝統的に使われてきた隠語である
かって生地を仕入れる際には契約を交わさず、口約束でするのが慣例だった
売れ残りを付き返したり、値引き交渉の条件にするのに便利だった
衣料品では流行や天候などに売れ行きが左右され、予測が外れた時に
その誤差を立場が弱い生地メーカーに押し付けてきた
口でつぶやくだけだから「つぶやき文化」と呼ばれてきた
経済が右肩上がりの時代ならまだ良かった
低成長時代では「つぶやき文化」は生地メーカーにとっては経営の深刻な圧迫要因となっていた
つぶやき文化から脱却しようと    
アパレルメーカーとしては「身を切る行為」に違いないが私は業界を挙げて改革に取り組むことにした
2003年5月、素材やアパレルメーカー、商社など24社で「経営トップ会議」を発足
この初会合で岐阜の織物産地の代表者が涙ながらに窮状を訴えた
「機屋と問屋の間では色々あったのは事実、でもこれが最後のチャンスです、今やらなければ繊維業界は本当につぶれてしまう」と
いかに素材メーカーが苦汁をなめてきたかを象徴する言葉だった
(やり遂げなければ業界が衰退する・・・・)参加者全員が悟った
翌年までに計15回、80時間の議論を費やして業界のガイドラインを作った
項目は
① 全売買は口約束ではなく発注書を発行する
② 発注単位を事前協議で取決める
③ 納品、取引を100%遵守する
今では参加企業は60社以上に増え大きな成果を上げている
左官業界とゼネコンとの左官工事の契約は設計図書にある工事は積算数量を元に値入をして契約書を交わす
しかし問題は現在の建築は設計図書に無い工事を左官技能者が仕上げないと完成しないことにある
この工事は設計図書から積算できないし、実際の工事において幾ら掛かるか誰にも分からないのだ
このことは設計図書から無くされた左官工事の問題点として発表し、関係団体に訴えてきた
契約外とか、追加工事と呼ばれている工事が契約工事の2倍、3倍となる建築があるのである
又この工事は日々発生することも在り、口約束が慣例となってきた
口約束のため、精算段階で予算が無い、お金が無い、様々な理由で左官業界は
働いた報酬を支払って貰えないことが多くあったし、現在も同じ状態である
最近の工事例である
独立行政法人のつくば市の某研究所50億の建築である
床コンクリート直押さえ工事、以外の左官工事の契約は800万円しか無かった
なんと追加工事が4000万円も掛かったのである
例に洩れず最後の精算でお金が無いと言うことで負けさせられている
口約束の為、下請は弱い立場であるので負けざるを得ない
この追加工事には約2000人の左官技能者が鏝を持って仕上げたのだが
仕上げた場所は全く見えないのである
完成したあと、ゼネコンのトップに2000人もの左官が何の仕事したのかと
訊ねられて説明したが理解できなかったようである
多分設計事務所も理解できないことでしょう
問題は口約束で追加工事をやらざるを得ないことだ
精算時にやった工事の支払いをして貰えずに
多くの仲間が倒産、廃業に追い込まれてきた
自殺した仲間もいる
左官業界には本来の塗壁の左官工事はないし、若者の入職も無く、高齢化が進み
キチンと精算して貰えぬことも在り、疲弊して存亡の危機を超えてしまったと思う
建設業に、若者の入職者を増やすことを目的に国交省は保険未加入解消の対策を発表したが
まずは建設業に残っている、前近代的な、口約束の契約の解決を第一にお願いしたいものだ
口約束で仕事をさせられた挙句、働いた報酬を貰えない左官業界である
左官の息子が左官にならなくなって久しいものがある
自分の子供に己が生業の夢、魅力を語れずして、子供が建設業に入ってくるわけがない
建設業界にも馬場氏のようなリーダーが現れて欲しいものだ