住まいは夏を旨とすべし?

「家の作りようは、夏を旨とすべし。冬はいかなる所にも住まる。
暑き比(ころ)わろき住居は、堪え難きことなり。」
吉田兼好の「徒然草」第55段の一節である
これに「冬を旨とすべし」と反論している人がいる
前野真之東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻准教授である
人間ほど暑さに強い動物は滅多にいない。マラソン選手は夏に炎天下でも
走り続けるがこんな事ができる動物は人間の他馬くらい。
ともに体毛が薄く、発汗機能が発達している為、暑さは得意なのだ。
人間が快適と感じる気温は湿度と風速、輻射熱などで決まる。
湿度が低く風があれば発汗が促進され、30度を超える高温でも
許容できる。
一方低温側は焚き火などの輻射熱がなければ20度が下限である。
体毛が少なく、比較的薄い体脂肪しか備えない人体は寒さには大きな
ハンデイを負っている。
夏の最高気温は日射を遮れば35度がせいぜいであるが、冬の寒さは氷点下を切ることも
ザラである。
寒さへの対応が重要であることは明白だ。
勿論、日本では湿度が高い為に発汗の効果は低くなりがちであり、暑さへの配慮は必要ではある。
しかし、だからといって、冬をおろそかにして良い理由とはならない。
夏と冬のどちらかを優先するのなら
「冬を旨とすべし」である
また「高断熱・高気密」が冬の備えの要であると言っている
冬の備えは万全だろうが夏の備えはどうなのだろう
日本の夏は高い湿度が耐え難い不快感を住む人に与える
友人のインドネシア人の奥様は日本の夏は耐え難いインドネシアの夏と全く違うと
嘆いておられた。
兼好法師の時代エネルギーの無かった時代である
エネルギーを使わず、不快の元凶、高い湿気を防ぐ智恵が
家のつくりであり
湿気を吸放湿する素材 土壁、漆喰壁、茅葺の屋根、木、紙、畳であった。
現代の家はエネルギーが無ければ夏を快適に過ごせない家であると思うだが
また寒さが人体に悪いと考えているように思うが、極寒の地に住む人々もいるし
極暑の国で元気に生活している人々もいる
人間は暑さ寒さには負けない身体を持っていると思う
暑さ寒さでは病気にはならないのだ
問題は高い湿気の気候である、カビの胞子は湿度60%以下では死滅する
カビの発生する高い湿気の空気が人体に悪影響をおよぼしている
空気中の水の分子は湿度70%以上でプラスイオンになり、体内に入り活性酸素を増やす
体内に活性酸素が増えすぎると病気になりやすい
高い湿気はカビの胞子を、プラスイオンを体内に増やし病気になりやすい身体をつくる
先人は高い湿気の環境に居ると病気になることを知っていたのである
現代人は科学を信じるのだが先人の体験から生み出した英知は信じない
愚かな事である。
「住まいは夏を旨とすべしである」