技と感動

塗るとくっ付ける。

イベントお客様にこの壁は私でも塗れますかとよく聞かれる。

以前は塗れます、今はくっ付けられますと答える。

素人は壁を塗るとくっ付けるの違いが分からない。

左官の技能は塗り付け鏝で平らに壁を塗り、押さえ鏝で表面を磨いて仕上げる。

素人はくっ付けるだけである。

下塗りで下地を平らに塗り、上塗りを同じ厚みに塗って仕上げる。

平らに塗る、同じ厚みにどんな壁材でも塗れるようになるためにはひたすら壁を塗り身に付ける。

無機質の壁材は水引のしまりで表面を磨き仕上げる感性が必要となる。

上塗りが同じ厚みに塗っていないと水引が違い色むらの原因となるからである。

有機、樹脂系の壁材はくっ付けやすく塗り厚がいい加減でも色むらが出ない

素人でも塗れる(くっ付けられる)壁材である。

左官の壁材は素人が塗れず

仕上げられない難しい壁であり

呼吸する壁であった。

難しい壁を嫌った左官業界

素人でも簡単に塗れた繊維壁、樹脂入り壁に走り

呼吸しない壁でもあったために

お客を無くし、技能も誇りも失うことになった。

今、漆喰壁の復活の声が上がっている。

どの世界でも素人の世界には震えるような感動は生まれない。

プロ左官としての誇りと技能を以て

本物の壁の持つ震えるような感動を顧客に与えていきたい。