青年は難しいことに挑戦しよう
使命感、尊敬を失った左官
左官の建築における存在感が軽くなった
かっては建築費の10%を占め、労務5業種のトップであった
若い監督さんから、左官て、「どんな仕事をするんですか」と尋ねられ
絶句したと職長から報告があったのはいつのことだろうか
建築の乾式化、工業化、合理化によって、大学の教科書から無くされ、
設計図書から一方的に塗り壁が無くされたのが最大の原因であるが
左官業界にも原因があったのではと思う
左官の壁の原点は、土壁、漆喰壁であり、左官は自分で材料を調達し研究して良り良い壁を塗ってきた
この壁は、日本の風土にあった調湿性の高い機能のある壁で住まう人の健康、命を守ってきたのであり
そこに左官の使命、誇りがあったと思う
戦後、日本中の住宅が焼き尽くされ、大量の住宅が必要になった
早く造るために、壁はラスモルタル、石膏プラスター 、繊維壁が開発された
左官から材料の開発、製造権がメーカーに移ったのである
早く、安く、塗りやすいがメーカーの製造コンセプトであった
石膏プラスター、繊維壁には日本の風土、湿気に弱い欠点があり、カビやすい欠点があった
又、繊維壁は素人でも塗れるような簡単で楽な塗り壁でもあったのである
他に代わる壁材は無く、左官業界は大繁栄した
誰でも、素人でも塗れる壁は儲かったかもしれないが、左官の技能の低下を招き左官の誇りを失い
社会からの尊敬も失われてきたと思う
繊維壁は、湿気に弱く、ポロポロ落ちたため、対策としてボンドを混入したため、調湿機能を失い
ビニールクロスに価格競争で負け、あっという間に建築から左官の壁は消滅した
建築のシックハウス問題、環境、健康意識の向上で、左官の壁に関心が高まり
25年前に健康、命にいい壁として珪藻土壁が開発された
パイオニアメーカーは珪藻土壁を漆喰で固めたが、漆喰系珪藻土壁は塗りやすいが仕上げが難しい壁であった
簡単で楽な壁に馴れた左官には扱いにくい壁であり嫌われてしまったのである
後発メーカーは、簡単に塗れる壁をコンセプトに、ボンド(合成樹脂)を混入した珪藻土壁をつくった
樹脂添加の珪藻土壁は塗りやすく、仕上げが簡単な壁であるが肝心な調湿機能は少なく
日本の風土には適合しない壁である
現在出回っている左官壁の殆どが樹脂添加型の壁である
左官業界、樹脂を添加した簡単で楽な壁を塗って、ビニールクロスに負けた経過があるにも係わらず
簡単で、楽な樹脂添加の珪藻土壁を塗っている左官が多い
日本の風土に適合しない樹脂壁を塗っていたのでは左官の未来はないであろう
今、茨城県に、住まう人の健康の為に樹脂無添加の珪藻土壁を塗り始めた若手左官が現れている
青年は簡単で楽な壁ではなく、難しい壁に挑戦することにより
生甲斐・やりがい、住まう人の健康、命守る左官の使命、誇りを見出したのである。
茨城県の若者に続く青年が現れることを希望したい