建設業の2007年問題
団塊世代のベテラン熟練工が大量退職する2007年問題において製造業では急ピッチで対策が講じられている。
これは熟練工の技能・技術は文書化が難しく、製造現場で直接手本を示して伝承する方式でしか、継承が困難であるからである。
製造業では各企業内で「弟子入り制度」、「ものつくり大学」、「匠道場」、「技能道場」、「名匠システム」等の名称での技能継承システムが企画され取り組みが活発である。
コストを考えない、採算を度外視した熟練技能養成ライン、教育システムである。
2006年春の新卒採用もメーカー各社で大幅に増やしている状況にある。
厚生労働省の調査では若年層の直近1年間の採用動向では建設業は13産業中低い水準である。
しかし、建設業界においては2007年問題は問題にならないのか、危機意識があまり感じられない現状である。
又、技能者を直接雇用する専門工事業界でも技能後継者問題に関しては専門工事業界内で危機意識に温度差があるし、官庁、建築業界、設計業界においては建設技能者の2007年問題は聞こえてこない。
建設業の乾式化、工業化、ロボット化の流れの中で日本の建設文化を支えてきた、伝統的技能者、大工、左官、建具、板金などの職種は設計の中から無くされてきた傾向がある。
問題は文書化できない工法の技能者、建築の伝統工法の技能者の育成継承が難しくなっている事である。
技能者の育成は専門工事業者が担っているのだが、かっての徒弟制度も無く、低単価、指値の横行、追加工事の不払い問題等が山積し、長びく建設不況の中で経営環境が悪化し、後継技能者育成には資金も人も無く諦めに近い状況がある。
又、建設技能者の賃金は平均300万~400万以内で低賃金である。
特に技能を必要とされる、労務主要5業種といわれる鳶、土工、型枠、鉄筋、左官の業界では社会保険、厚生年金、失業保険、退職金等の福利厚生面を切り捨て、職人の外注化が進んでいると聞いている。
低賃金で、福利厚生、退職金、土休も無い、日給月給の業界に優秀な若者がはたして入職してくるか疑問を感じているものである。
建設業の2007年問題は間違いなく進んでいるものと思われる。
現在の建設業界の建築技能を担っている職人は徒弟制度が存在していた頃に親方に養成された、団塊世代の職人である。
特に技能習得が困難といわれる左官業界は高齢化が著しく60歳以上の高齢者が7割を超えている現状がある。
官庁、設計、建築、専門工事業界一体となった、建築技能者の育成の取り組みを希望したいものである。