職人の技

 我々は感動を買っているのである。

目に見えない、職人の誇り、気概を買っているのである。

それが我々の心を打ち、感動を与えてくれる。

感動とは職人の鍛えられ、磨かれた技にある。

工業製品は美しい。ワープロの文字は美しい。

綺麗であるが感動はない。

 電動鉋で削られた木の肌は水が滲みこみ、鉋の肌は水を弾いてくれる。

美しいもの、美味しいものは感動がある。五感が感じるのである。

高価、高いだけでは本当の感動はない。

 若者が建設業に入職しない。

大学で学生の講義用に編集された。1992年に発行された建築施工に、1960年からの第二次建設ブームで工事量は急速に増加し、現場作業のプレファブ化、機械化が大きく伸展し、木材から鋼材へ、特に仕上げ工事の中で現場作業の多かった左官工事は、仕上げ工事の中心から徐々に消えて乾式工法が導入されるようになったとある。

 建設業の合理化の名の下に設計図書から左官の塗り壁が一方的に無くされたのである。

 日本の建築を支えてきた大工、左官、建具、板金等の伝統技能の職種が無くされたのである。

日本の住文化が建築から抹殺されたわけである。

 建築から技を無くし、全て工業製品で、ロボットが作った部材で加工、組み立てをしている建築が多い。

 技を無くした業界に感動は無い。感動が無い業界に若者が入ってくるわけが無い。