男はつらいよ
山田洋次監督が寅さんのことを語っている
1960年代以降日本は高度成長を遂げたが家族崩壊が始まった
長い間続いた畳の上で家族そろって暮らして生活から茶の間はリビングになり
ちゃぶ台はテーブルと椅子になり、子供部屋が出来、夕食はバラバラになり一家だんらんがなくなった
日本は経済最優先で生活は便利になったが文化や心の問題がなおざりにされてきた
1970年大阪万博のころ、日本は科学技術がすべてのように思っていたが
科学技術万能に対して不安があった
その頃現れたのが1969年「男はつらいよ」の寅さんです
進歩や発展なんかには何の興味もない
旧式で駄目な男だけれども観客たちは彼にほっとした
そこには「人間らしい」思いがあります
作品を通して人間的な感情に触れ、豊かな心が生まれる
ここに芸術の大きな役割があると思います
映画だけでなく文学も音楽でもそうです
日本の政府は戦後、経済成長一辺倒で、文化や芸術には無関心でした
大阪市の文楽への補助金問題が報じられましたが
オペラ、オーケストラなども何らかの援助が無ければ成り立ちません
文化や芸術は「採算性」、「効率性」という尺度で捉えてはいけないのです
政治家も役人もホールなどの建物を作ることには熱心でも、肝心の芸術には全く理解がない
その結果、見かけは豊かでも内面は貧しい国になってしまった
今こそその方向性を変えるべき時に来ていると語る
日本の建築の美は日本人より明治にきた外国人が発見し驚嘆した
日本の美術を評価し世界に紹介したフェロノサは奈良、京都の建築の美も称賛している
1933来日した建築家ブルーノ・タウトは伊勢神宮、桂離宮、白川郷等を絶賛し
その素晴らしさを全世界に伝えている
日本の建築の美は職人が作ってきた
日本の職人はお金ではなく、仕事に打ち込み、職人道として
己の持てる技能を最大限その作品に注いだのである
美意識に優れた日本の職人が造り出す建築は現代建築家がいう
単なる箱ではなく芸術作品の風格があったと思う
そこには子供達に豊かな心、人間らしさを育てる生活、佇まいがあったと思う
美意識が高い、左官、大工、建具等の技能は採算性、効率性が悪く現代建築から無くされてきた
ゼネコン、ハウスメーカーも効率性、採算性を追求するばかりでなく
未来の日本を担う子供たちに職人の技が造り出す美と豊かな心を育む居住空間を提供して欲しいものだ