陳情
茨城県知事に県の公共工事に左官の塗壁の採用を要望した
陳情の趣旨は
日本建築は、日本の持つ気候風土に順応して発展をし、その意匠や構造の美しさは世界に誇りうるものとなっております。左官につきましても、古来よりの土壁塗、漆喰塗りの伝統技術に始まって近代のセメント系の技術に至るまで常に改良・改善を重ね、時代に応じながら伝統的な技法を伝えているところです。
元来左官技術は建設業の中でも技能要素が高く、習得までに年数がかかり、又機械化が出来にくい面があり、水仕事、汚れ仕事として若者に不人気な職種でございましたが、先人の英知の中で職場環境の改善、労働環境の改善、技術の改革に努め、技能の継承をはかり、漸くにしてその技能が社会に認知されるところまで至っております。
しかしながら昨今の建設業の工業化、合理化のもとに三十数年前より左官の塗り壁はコストがかかる等という理由で無くされ続けてきまして、現在の設計図書においては左官の塗り壁が皆無のものがあります。さらに加えてバブル崩壊後の永い不況の経済情勢が零細業者の多い左官業界の経営を直撃し、技術の向上、作業工程の合理化、コスト削減などの日夜の努力もはや極限の状況になり左官業界の経営が成り立たなくなってきており、古来より千四百年に渡って営々として築かれてきました歴史と伝統ある左官技術の継承は若年者の入職が無く、技能者の高齢化が著しく、左官連合会の会員も最盛期の800名から、現在74名と今まさに存亡の危機に直面するところとなっております。
特に設計図書に左官の塗り壁が無い現状では若年後継者の左官技能の習得は不可能であり、設計図書に左官の塗り壁の採用をお願いするところであります。
ところで最近の報道で大きく取り上げられている、居住環境の問題でシックハウス、シックスクールが大きな社会問題となっております。著名な学者の説によればシックハウス症候群は甚大なる健康阻害、子供の脳の異常、精子の減少、子宮内膜症の増加などが発表されております。
居住環境は三十数年前から湿式の左官の塗り壁が消えて乾式の新建材、工業化製品に大きく変化を遂げたわけでありますが、その中には人の健康や、地球の環境を破壊する有害のものが多く含まれていたのであると思います。又新建材、工業化製品の多くは石油から作られる合成化学物質で出来ている為、燃えると有害なガスを出しますので火災の際、弱者の老人、幼児の被害が大きく報道されてもおります。
古来より左官の塗り壁は土壁、漆喰壁に代表される自然素材で出来ていて、人の健康を守る、年月とともに劣化しない、地球の環境を汚さない優れたものであることが社会的に再認識されたものであります。
これからの居住環境造りのキーワードが「健康」「自然」「環境共生」であれば、自然素材を使う左官の塗り壁は、時代の流れに適合したものと思います。
左官の塗り壁の工法は、自然素材を使用するものが多く、人や環境を傷つけない家の寿命を長持ちさせる、地球環境に負荷を掛けない等の優れた特徴をもつほか、結露、カビを防止、火災に強い、有毒ガスを発生させない、又産業廃棄処理が容易であるなどの長所をあわせもっています。
茨城県左官工業連合会では、現代に適合した新しい土壁としまして、十五年前より石灰系珪藻土壁の普及に取り組んでおります。
石灰系珪藻土壁は日本の伝統的な塗り壁、漆喰の中に珪藻土を配合したいたってシンプルなものですが、厚み三ミリで古来の土壁に機能が匹敵し、強い調湿機能で結露、カビを防止、室内のホルムアルデヒド等の有害ガスを消去してシックハウスを防止して、住む人の健康、命を守る働きがあり、カラーも豊富でスピード性もあり、生成するマイナスイオン効果で生活する人の健康、免疫を高めてくれる機能があります。
茨城県内では公共、民間建築において14万㎡の施工実績があり、またこの度の東日本大震災においてクラック被害等の発生がありませんでした。
貴職におかれましては今、社会問題となっているシックハウス、シックスクール等を防止する塗り壁として、又、良質な建築物の建設を図られるために、又、伝統ある左官技能の継承の為に日本の伝統的な土壁の流れを汲む自然素材「石灰系珪藻土壁」の「左官工事」を積極的に採りいれて下さるよう御願いすると同時に、地場産業の復興と後継者の育成と、人材確保の為、労働大臣認定の技能士資格を有する当連合会参加の者にご下命下さいますよう重ねて御願い申し上げる次第です。
土木部長にお願いしたのだが
左官人口が昭和50年最盛期の30万人から平成22年の統計調査では87000人に激減
茨城県左官工業連合会最盛期の800人から平成24年には74名に激減してしまった
このままでは文化財の改修で土壁、漆喰工事などが出来なくなる旨を説明した
左官の現況を始めて知ったようで驚いていた
今後、情報交換をかねて、県の営繕課との交流の機会を設けて貰えることになった
歴史ある日本の左官技能を何としても残したいものである