欠陥工法

欠陥工法
 現代の建築の設計図書には左官の仕上げの塗り壁、塗り床が皆無のものが多い。
左官技能者を必要としない建築になっている。
 壁はコンクリート打ち放し仕上げ、床はコンクリート直押さえ工法である。
コンクリート打ち放し仕上げは要求される精度、程度に完成されることはなく、左官技能者がつけおくり、躯体直し等をモルタル、既調合厚付けモルタルを使用して精度を完成している。
 
コンクリート直押さえは仕上げレベルの誤差を認めている工法である。後付けする金物は誤差の無い工業製品である。そのためにサッシュ周り、沓摺り周りに誤差の修整が発生し、モルタル等で左官が塗って仕上げている。
又コンクリート直押さえが完成後、養生期間を取らず、養生もせずに、翌日から躯体工事など開始され、床表面に疵、汚れを生じ、その汚れ、疵の修整も左官がやって仕上げている。
 
コンクリート打ち放し仕上げはコーン処理、目違い払い、下地調整塗り施工しなければ、後工程の各種仕上げは出来ない仕上げである。
そしてコ―ン処理、目違い払いは特殊作業員の施工となっている。
下地調整塗りは左官工事に仕上げ塗材仕上げの下地処理として複合されていて仕上げとして独立されていない。
この辺がコンクリート打ち放し仕上げを分かりにくくしている点である。
 
左官が困っている問題は、基本的にはコンクリート打ち放し仕上げ、コンクリート直押さえは左官工事の範疇ではなく、左官技能を必要としない仕上げ工法なのだが、左官技能が無ければ完成しない工法である点である。
 
この工法の左官にとって最大の問題点はコンクリート打ち放し仕上げのつけおくり、躯体直し、下地調整塗り、又コンクリート直押さえの疵埋め、疵補修、汚れ取りでは左官技能を習得、維持継承不可能な事である。
コンクリート打ち放し仕上げ、コンクリート直押さえ工法はそれを完成されるために左官技能を必要としながらその左官技能を習得、維持継承できない工法は欠陥工法と言わざるを得ない。
 一つの例として茨城県庁舎の工事を紹介したい。
総工費250億の建築である。設計は松田平田設計、施工は竹中工務店JVであった
工事が始まって、竹中工務店の左官担当が言うにはこの現場はコンクリートの直押さえはあるが、後の左官の仕事は無いと言う。左官の仕事は無いのだが、経験上、この現場を完成するには2000人の左官が必要となるだろうという説明であった。
 2000人の左官が何をするのかと訊ねたところ、分からないとの事であった。
最終的には2000人では納まらず、6000人の左官を必要とした。
 
設計図書に左官の塗り壁、塗り床は皆無であったが、セメント4300袋、既調合モルタル数千袋を使用した。
完成後、県庁の人に6000人の左官技能者は何を施工したのですかと訊ねられたが左官の仕上げは全く見えないので説明に困った。
 
左官を必要としない設計をした松田平田設計の担当者にはなお理解不可能のことでありましょう。
 
確実に言える事は左官技能者が不足して建築の完成に支障を来たすタイムリミットが迫っていることだ。
しかし担当官庁、設計業界、ゼネコンは全く知らないようである。