旦那・パトロン

渡辺京二著「逝きし世の面影」に

幕末、明治に日本を訪れ外国人の日本、日本人に対する賛嘆の言葉が書き綴られている。

職人が作り出す作品もその一つであり、家も賛嘆の対象であった。

日本の職人は技能を一つの道として高め芸術の域にまで高めていたと思う。

芸術作品は大きな感動を人にもたらしてくれる。

古今の芸術家にはパトロンが存在した。

ヨーロッパでは王侯貴族、または資産家と呼ばれる人たちであった。

日本でも貴族、殿様、商家の旦那と呼ばれる人たちであった。

そのような人たちに支えられて職人は思う存分の腕を揮って素晴らしい作品を生み出したのであろう。

日本の現代は税制、所得税の累進課税、相続税の税金の二重取り等の影響で勝手のような旦那、資産家が生まれにくい状況にある。

企業がパトロンになればいいのだが好況時はいいのだが、不況時には全くしぼんでしまうので日本の企業はあまり当てにはならない。

ここは一つ国民のお金をしっかり税金で取っている、国に旦那、パトロンになってもらうしかないようである。

後継者育成には徒弟制度という優れた制度が日本にはかってあったのだが、戦後民主主義、平等思想の影響で徒弟制度は封建的である、又最低賃金制度の導入で、早い業界では昭和25,6年ごろには無くなってしまった。

左官業界では昭和30年代後半までかろうじて残っていたと思う。

現在一番腕が良いと思われる60代の左官職人は徒弟制度で育てられたのである。

徒弟制度の復活を望んでもそれは不可能である。

左官の土壁の塗り壁は難しいが故に面白く、奥が深く、若い職人をのめりこませる魅力がある。

難しい塗り壁、仕事があれば左官の後継者は育成できると思う。

国、官庁に旦那になって貰いたいものである。