日本刀とサーベル
日本の左官の現状
日本の左官の技能は塗り付け鏝(肉厚の厚い金鏝)で厚塗り材料を高い面は薄く、低い面は厚く塗り、平らな面に仕上げ塗りつけた後、仕上げ鏝、(肉厚の薄い金鏝)で金鏝押さえ、金鏝磨きして平滑な面に仕上げる技能であり、金鏝での粗面仕上げも可能である。
ヨーロッパの左官技能は肉厚の一定した鏝で厚塗り材をくっ付けてから削って平らにした後粗面に仕上げする。
平滑な表面仕上げは研磨して平滑に仕上げる技能である。
日本の左官技能は厚い塗り壁、薄い塗り壁でも金鏝のみで平滑な面に仕上げることは出来るがヨーロッパの左官技能は金鏝で薄い塗り壁を平滑な面に仕上げることは難しい。
金鏝の違いと使い方の違いであり、刀でいえば日本刀とサーベルの違いとも言えるでしょう。
塗り付け鏝(厚い金鏝)は厚塗り材を塗る鏝。仕上げ鏝(薄い金鏝)は薄塗り材を塗る金鏝である。
ゴルフの道具に例えれば、塗り付け鏝(厚い金鏝)はドライバー、仕上げ鏝(薄い金鏝)はパターともいえる。
塗り付け鏝(厚い金鏝)で厚塗り材を下地の高い点には薄く、低い点には厚く塗って平らにする塗り付けを繰り返し数多くこなさなければ、平らな壁面に仕上げる日本の左官技能は身に付かない。
仕上げ鏝(薄い金鏝)では厚塗り材は塗ることは出来ず、平らな壁面に塗り付け仕上げる日本の左官技能の習得は不可能である。
現在は町場左官、野丁左官も壁材は薄塗り材が殆どで薄い金鏝しか必要としない。
塗り付け鏝(厚い金鏝)は使用する場所がなく左官道具箱で錆びている状況である。
現代の左官はドライバー(厚い金鏝)を使用する塗り壁の場所は少なく、パター(薄い金鏝)で間に合う塗り壁が殆どである。
パターは素人でも使えるように、薄い金鏝も素人が一応使える鏝である。
現代の左官はパターゴルファーとも言えましょう。
パター(薄い金鏝)だけでは世界に無い日本独特の左官技能の習得は不可能であり、技能の維持、継承も難しい。
日本の左官技能の習得は非常に難しい、難しいが故に習得した若者に大きな感動と喜びを与えてくれる仕事だ。
世界に無い日本の左官技能の継承の為には、日本人の健康と命を守ってきた1200年の伝統ある調湿機能の優れた土壁、漆喰壁、そして現代の珪藻土壁等の塗り壁を建築に増やす事を希望したい。