逝きし世の面影

渡辺京二著 「逝きし世の面影」は
明治初期に来日した外国人が日本、日本人について書いたものを紹介したものである。
そのなかから職人文化、日本の住まいを紹介したい
夜店には美しい瀬戸物や紙入れや扇が並べられ、いずれも普通の日用品なのに、うっとりと眺めこまずにはいられない。
江戸の職人は真の芸術家である。
日本人は安物をこんなに美しく作れるのかわかりません。
日本の職人は本能的に美意識を強く持っているので、金銭的に儲かろうが関係なく、彼らの手から作り出されるものはみな美しいのです。庶民が使う安物の陶器を扱っているお店に行くと、色、形、装飾には美の輝きがあります。
ここ日本では貧しい人の食卓でさえも、最高級の優美さと繊細さがある。
形、色、さらに全体的な効果の点で殆ど欠点がないというのは、好事家が求める高価な品々に限った事ではなく、農家の為に作られた家庭用品もまたそうであるのだ。
最高の美術品とお話にならぬ安物とがともに手を携えている。
ヨーロッパ人にとっては芸術は金に余裕のある裕福な人々の特権に過ぎない。ところが日本では、芸術は万人の所有物なのだ。
日本の室内
満足を味わいながらじっと視線を注ぐような物品が、眼前に殆ど存在しないような絶対の清浄と洗練こそが、日本人が努力して止まない屋内装飾の要諦なのだ。
畳、襖紙、壁、杉板張りの天井・・・それらの中間色の色調がかもし出す、雰囲気は憩いを与え、「部屋を極度に静かなかつ洗練されたものにする
この本には日本、日本人について感動した外国人の文章が多く紹介されている。
戦後教育によって暗黒の歴史のように教えられた江戸時代、幕末の日本人がいかにイキイキと豊かに幸せに過ごしていたのかが知らされる。