コンクリート打ち放し補修

コンクリート打ち放し仕上げと、打ち放し補修の疑問についてまとめてみた
コンクリート打ち放し仕上げと打ち放し面補修
☆ コンクリート打ち放し仕上げA、B、C種とは
公共建築工事仕様書「以下{標仕}}においてコンクリート打ち放し仕上げの種別はA、B、C種の3種類があり、どの仕上げ下地に適用するかは明確にされていない。
コーン処理(Pコーン埋)、目違いのグラインダー掛けはコンクリート工事の中の型枠工事の範疇であり、左官工事ではない。
☆国土交通省のコンクリート打ち放し面補修とは
国土交通省の公共建築工事積算基準「以下{積算}」において型枠工事に
コンクリート打ち放し仕上げにおける打ち放し面補修A、B、C種があり
A種はコーン処理、
B種は部分目違い払いコーン処理共、
C種は全面目違い払いである。
そして施工は特殊作業員がするとあり、型枠大工、左官が施工するのではないのである。
(特殊作業員とは相当程度の技能及び高度の肉体的条件を有し、各種作業について必要とされる主体的業務を行うもの)
このように国土交通省のコンクリート打ち放し仕上げの補修の見解は型枠工事の範疇で有り、
左官が一般に補修と称して施工している薄塗り材を塗る事ではない。
疑問に思うのは打ち放し仕上げの補修として、打ち放し面補修があり、それはコーン処理と目違い払いであることだ。
常識に考えてどのような仕上げでも、その補修といえば仕上げの手直しを指すことである。
そしてその手直し、補修はその仕上げをした職種がやる。他の職種ではその補修の技能は無いからである。
また仕上げ工事において、仕上げ工事と同時にその補修工事が発生したら、それは仕上げ工事の意味がなさない。
タイル張りと、同時にタイル張り補修があるがの如くである。
仕上げに対する補修の用語の意味合いが国土交通省は理解していないように見受けられる。
コーン処理、目違い払いを打ち放し面補修といい、特殊作業員がするとあるから、設計、建築、左官業界が迷い惑う事になっていると思う。
(コンクリート打ち放し仕上げA種)は
目違い、不陸等の極めて少ない良好な面とするとある。
☆ コンクリ-ト打ち放し仕上げA種は、コンクリ-トを打設してそのままの仕上げの化粧打ち放しコンクリートであると思う。
その仕上げのイメ-ジは、見る人の主観で違い一定ではない。この場合は仕上げであるのでコンクリ-ト打設等が失敗して見る人のイメ-ジに合わない場合は補修をしてイメ-ジに合うようにするしかない。これを化粧打ち放し仕上げ打補修と称している。
設計事務所は平気でコンクリート化粧打ち放し仕上げは失敗したら補修するしかないという人が多くいる。
建築の仕上げを補修しなければ仕上げにならないという矛盾に気がつく設計家は少ない。
☆ コンクリート打ち放し仕上げB種について
打ち放し仕上げB種の程度は、目違い、不陸等の少ない良好な面とし、グラインダ-掛け等により平滑に調整されたものとするとある。
B種は一般に、仕上げ塗材塗り、塗装、壁紙張り下地に適用されていると思う。
☆ 各種仕上げの下地調整
Ⅰ・ 各種仕上げ塗材塗り仕上げ(以下吹付とする)の下地調整 (左官工事に含まれる、但し、吹付厚塗材下地は含まれない。)
(仕上げ塗材塗りは日本建築学界建築工事標準仕様書(JASS)では23吹付工事に分類されている。当然下地調整は吹付け工事の範疇であり左官工事ではない)
各種(吹付)の下地調整は、目違いサンダ-掛け等の後、セメント系下地調整塗材を1mm以下、1~3mm、3~10mmの程度全面に塗り付けて、平滑にするとあり、塗り厚は3段階になっている。
Ⅱ・ 塗装、壁紙張りの下地調整塗りは塗装工事、内装工事の壁紙張りに含まれており、左官工事の範疇ではない)
左官工事の範疇ではないのだが
{積算}において塗装工事、壁紙張り工事の素地ごしらえの中の下地調整塗りは左官がするとある。左官がするとあるのであれば左官工事に含むのが本当であろう。
塗装、壁紙仕上げの下地調整塗りは、セメント系下地調整材を、全面1~2mm程度塗り付けて平滑にする。
Ⅲ. タイル下地のコンクリート下地補修
{標仕}においてタイル下地は、タイル張りが、密着張り、改良積上げ張り、改良圧着張り、マスク張り、及びモザイクタイル張りの場合は、モルタル中塗まで行う。積上げ張りの場合は、厚さ6mmの下塗を行う。
内装タイル接着剤張りの場合は、中塗まで行い金鏝で仕上げると、{標仕}に明記してある。
建築工事管理指針「以下{管理}」において{標仕}の工法(その2)のハ積み上げ張りがあり、コンクリートに直張りがある。
躯体コンクリートに直接タイル張りする工法において、コンクリート表面はモルタル表面比べて平滑であるとあるが、タイル張り前にコンクリートの不陸補修を行う場合のモルタルはポリマーセメントモルタルを使用するとあり、矛盾した言い方をしている。
このタイル下地のコンクリート下地補修の定義は明確に記述されていない。
このように{管理}のタイル直張り、又JASSタイル下地の各種下地の最初にコンクリート下地があるし、左官工事JASS15において、6.7他工事の下地つくりにコンクリート仕上がり精度が良くなるとセメントモルタル塗は省略できるとあるとある。
そのため民間工事においてはコストダウン、VE等により、コンクリート打ち放しにタイル直張りに変更をすることが多い。
最近では初めから打ち放し補修タイル張りと明記している設計図書もある。
タイル下地の場合、この直張りの場合とか、設計図書に打ち放し補修タイル貼りと明記された場合の、下地補修の程度が不明瞭である。
Ⅳ・ 内装工事 各種床張物(ビニール床シート張り等)の下地処理は
内装工事に含まれる。
各種床張物の下地処理は、下地表面の傷等のへこみは、ポリマーセメントペースト、ポリマーセメントモルタル等のより補修を行い、突起等はサンダー掛け等を行い平滑にするとある
☆ 仕上げ塗材塗り仕上げの下地調整の問題点
下地調整は塗り厚1mm以下、1~3mm、3~10mmと3段階あり、単に下地調整では歩係りが決められない。最大厚み10mmであれば、大概の躯体調整は含まれると思う。
しかしコストダウン、VE等によって、塗り厚みは最大厚みにはならず、5mm程度で見積もるケースが殆どである為、コンクリートの躯体調整が多く発生する。
また10mmも塗るのであれば、これは下地調整ではなく、モルタル塗であろう。
仕上げ塗材仕上げ(吹付)の中に下地調整として、含むのではなく、左官工事モルタル塗の中に薄塗りモルタルとして含んでもらいたいものである。
現に{積算}には左官工事、左官工事細目に壁薄塗モルタル金ごて 厚5 既調合品がある。{JASS}にも既調合モルタル塗りある。但し{共仕}左官工事 モルタル塗には下塗りの軽量モルタル塗厚5mmあるが、仕上げの薄塗モルタル塗は認めてはいない。
☆ 塗装、壁紙張り下地調整塗りの問題点
下地調整塗りは1~2mm下地調整塗材を全面塗って平滑にするとある。
塗装、クロス仕上げにおいて下地調整材1~2mm塗って仕上げの出来る打ち放し仕上げB種は現実には施工出来ていないのでコンクリートの躯体調整が必要となる。
☆ タイル下地補修の問題点
タイル下地補修の定義が明確でないので補修の程度、範囲が分からず現場が混乱している。
現実には100%近い現場で設計図書の通り、打ち放し仕上げA、B種で施工しても、要求されている精度(目違い、不陸等の少ない良好な面とし、グラインダ-掛け等により平滑に調整されたもの。)には仕上がらず、(施工監理不十分であるとか、打ち放し仕上げ工事に携わる{型枠、土工、鉄筋、コンクリート圧送}の技能者の技能が未熟であると、言われることが多い)
そして、実際には、打ち放し仕上げの壁をはずったり、左官がモルタルで厚塗りをして下地調整の前の打ち放し仕上げB種の精度にする為の、仕上げ(JASS・左官工事:では付け送りとあり、その工事は左官工事の範疇ではないと明記されている)をしているのが現状である。
そして、この打ち放し仕上げB種の手直しのモルタルの厚塗り(どの工事にもその費用は無い)と、下地調整を合わせて一般に建築業界で誰もが補修と言っているのである。
ふつう、どんな仕上げ工事でも仕上げが失敗した場合はその仕上げ工事の業種が手直し、補修をその責任において施工するものであるがコンクリ-ト打ち放し仕上げにおいては、この工事に携わるどの業種も責任をきちんととろうとはしない。いや、実際にやろうと思っていてもその技能は無く、角を造り、壁を平滑に仕上げる技能を持っている左官が打ち放し仕上げA,B種の精度にする為の躯体修正をやっているわけである。
☆ 設計図書上に計上することの出来ない左官工事
ここで問題なのはこの打ち放し仕上げA、B、C種の躯体修整の費用はそのコンクリート打ち放し仕上げに携わる業者の責任範囲であるため、左官工事には計上されないことであり、躯体修整工事を左官で、施工しても予算がないと言うことで精算時、歩切り精算されることが多いのが現状である。
☆ 打ち放し仕上げ面補修とはなにか
最近設計図書上において、左官工事に各種仕上げの打ち放し下地補修が多く見受けられるようになってきた。
この場合、補修と明記されているのだから打ち放し仕上げは仕上げではないと言うのだろうか。なぜなら打ち放し仕上げが、仕上げであるのなら施工する以前から補修が必要な仕上げはあり得ないと思うからである。
国土交通省の補修の見解はコーン処理と目違い払いなのである。
現在、RC造の建物においては、100%近い現場においてコンクリ-ト打ち放し仕上げA、B種が要求される精度(目違い、不陸等の少ない良好な面とし、グラインダ-掛け等により平滑に調整されたもの)に仕上がることは殆ど無い。
又、コンクリート打ち放し仕上げには平たんさの標準値において3mにつき7mm以下、3mにつき10mm以下、1mにつき10mm以下の誤差が認められているが、後から取り付ける、金物、サッシ、沓摺り等の工業製品の誤差はゼロに近いので散り調整が必ず発生する。
☆ 左官工事として設計図書上に明記していただきたい
しかし、100%近い数字で打ち放し仕上げA、B種の程度、精度が確保できないのであるならば、設計図書上に、コンクリート打ち放し仕上げは、仕上げでないと明記するか、コンクリート打ち放しA、B種の下地調整、下地調整塗り、補修は、現在、左官で現実に施工しているモルタル薄塗り仕上げとし、塗り厚もきちんと設計図書上に左官工事として明記して頂きたいものであります。
☆ 後継者育成上の問題
打ち放し仕上げの一番の問題点は設計図書上に左官塗り壁仕上げが殆どないので左官技能者を育てていくことが不可能なことであります。左官技能は建築現場において繰り返し、繰り返し、壁、床をある程度の厚みを持って塗り、角を造ることで覚えるしか習得する方法はないのであります。
左官技能は塗り付け鏝で(肉厚が厚い、ゴルフでいえばドライバー、アイアン)で低いところは厚く、高い所は薄く塗って平滑な面に仕上げるのであり、
現在、多く使用されている角鏝(肉厚が薄い仕上げ鏝、ゴルフにいえばパター)で仕上げる薄塗り工法では、左官技能は習得不可能であります。
このままでは日本の建築文化の一翼を担ってきた左官の技能は消えていってしまう危惧の念を禁じ得ないものであります。
コンクリート打ち放し仕上げがでてきて僅かまだ30年の事なのであるのだが。数年後にはRC造の建築物は左官技能者が不足し仕上げが不可能になることも予想されます。
☆ 打ち放し仕上げに補修の用語を使用しないようにしたい
一般に打ち放し補修という用語が建築業界において使用されているが、しかし、誰に聞いても明確に説明の出来ない打ち放し仕上げの上に各種仕上げをする場合の打ち放しの補修と言う用語を建築業界から、設計図書上から無くしたいものである。
国土交通省の補修の見解はコーン処理、目違い払いであり左官の薄塗り材を塗ることではない。
☆ 若年後継者が多く入って来る建築業界にする為に
コンクリート打ち放し仕上げA、B、C種を造る為に、躯体業者が最大限の努力をして、設計図書の通りに工事を施工しても打ち放し仕上げの精度、程度が100%近い数字で確保出来ない、完成しないのである。
現場が納まらないのである。100%近い数字で完成しないのであればこの工法はどこか無理があるのではないでしょうか。
本来は躯体業者であるところの、型枠、鉄筋、土工の各業者が打ち放し仕上げという、仕上げをしなければならない所にこの後方の無理があると思うのです。
又コンクリート打ち放し仕上げの失敗の原因はその工事に携わる業者、職人の管理、技能不足であると言われる事も多いのであります。
しかし、苦労した努力が報われないで、物を造る人の、ものつくりとしての喜び、職人の生きがい誇りが何処にあるのでありましょうか。
左官技能者は修行時代血の滲むような苦労をして、又、長い年月を掛けて、塗り壁の左官技能を修得したのであります。
現在の殆どの仕事であります、躯体工事の範疇であるところのPコーン埋め、グラインダー掛け、又は、他職種が失敗した施工の手直しをするような仕事をする為に左官技能を覚えたわけではないのであります。
このような現状で、未来の建設業を担う優秀な若者が入職してくれるのでありましょうか。
少子化時代を迎え、建設業に携わる者は真剣に考えてみたいものであります。