職人不足とコンクリート打ち放し

安藤忠雄氏の双璧をなす記念碑的住宅が、西の住吉、東の城戸崎邸という
城戸崎邸は建築家の城戸崎博孝邸である
竣工は1986年10月
安藤忠雄氏は城戸崎邸で1988年吉田五十八賞を受賞している
施工後8年を過ぎて安藤忠雄氏にメンテナンスの助言を貰った
打ち放し仕上げは
「十分な手入れをして補修や清掃をしたほうがいいと」の
助言を受けて最初の補修は
1995年8月、竣工後9年目である
2011年に全面フッ素樹脂クリア塗装(施行単価3800/㎡)
汚染が目立つ上二面には上塗りとして最先端の塗装技術、「静電反発塗装」(施行単価3200/㎡を施工した
施工費は下地の吸水防止層施工費を含めて6000円/㎡になるという
施工面積は1453㎡である
汚れに負けない打ち放し
汚れそのものをよせつけない
コンクリート打ち放しは先端塗料で塗り替えれば、築27年でも新築同様と城戸崎氏は語っている
塗装をして新築当時と同じ打ち放しの美観があるとは思えないのだが
安藤忠雄氏は、著書にコンクリート打ち放しは左官、塗装等、各種仕上げを無くして
建築コストを下げる為に採用したと書いている
清掃は分かるが、定期的に十分な手入れと補修、メンテナンスが必要では
コンクリート打ち放しはかえってコストが掛かるのでは
安藤忠雄氏は日経アーキテクチュア2014.1.25で
硬くて密実なコンクリートを丁寧に打設すれば、強度や耐久性だけでなく
美観的にも優れた建築が実現する
強さと美しさを兼ね備えたのが打ち放しコンクリートの本質であると述べる
また堅くて密実なスランプ15程度のコンクリートを丁寧に打設すれば
補修の必要の無い美しいコンクリート打ち放しが完成する
コンクリート打ち放しは、永久にきれいなままだと誤解している人がいる
それは勘違いです
美しく保つ為には、適切なメンテナンスが必要です
建築主にはコンクリート打ち放しの維持管理の重要性をよく説明をして認識をしてもらう必要があります
メンテナンスは施工後10年が一つの目安になります
低汚染で耐久性の高い塗料の活用は、一見高価であっても
長い目で見れば補修のインターバルを長くすることができ、建築主の負担を軽減することが出来る
心配しているのは、職人不足
打ち放しコンクリートが日本で花開いたのは、現場監督の高い管理能力と
職人の高い技術力があったからです
日本の職人の熟練技術は世界的にもトップクラスで彼らの存在なしには
良質なコンクリート打ち放しは成立しません
職人不足を放置すれば、コンクリート打ち放しを支える担い手がいなくなってしまう
彼らが誇りを持って働ける環境づくりが急務であると語る
日本の型枠大工の打ち放しの優秀な技術を支えてきたのは
大工の頂点にある宮大工、数奇屋大工の大工精神、美意識が型枠大工にも
存在しているのでは思うのである
大工人口が激減している、最盛期の50%を切っている
大工さんが誇りを持って働ける環境をどうやってつくるかであるが
現代の日本本来の大工を必要としない設計、建築が多い現状では夢も誇りも持てないと思う